強迫性障害は、不安や強いこだわりを持ち、同じ行動を繰り返してしまう状態です。不安や強いこだわりにより、自己治療が難しい場合もあります。
訪問看護師が関わることで、症状の悪化を早期に発見でき、1人ひとりにあった適切なケアを受けられます。
この記事では、強迫性障害の症状や治療法、そして訪問看護師による関わり方について紹介します。
強迫性障害とは
必要以上に同じ行動を繰り返してしまうことはありませんか?行動を止められない場合は強迫性障害かもしれません。
まずはじめに、強迫性障害について解説します。
症状
強迫性障害の症状には、大きく分けて「強迫観念」と「強迫行為」があります。
「強迫観念」とは、頭の中で繰り返し取り憑く考えや思いのことです。繰り返す考えや思いは「合理性にかけている」と認識されますが、どうしても頭から追い出すことができません。
一方、「強迫行為」とは、強迫観念から生まれる不安に駆られて行われる行動を指します。自分でも「やりすぎだ」「無駄だ」と理解していても、行動を止めることができません。
強迫性障害の具体的な症状について、以下にまとめます。
- 不潔恐怖と洗浄
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- 汚れや細菌、ウイルスを極端に避けようとする
- 入浴やお風呂を繰り返し行う
- 加害恐怖
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- 自分が加害者であると思い混み、ニュースなどが気になってしまう
- 人に危害を加えていると思い込む
- 確認行為
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- 鍵をかけたか、電気を消したかなどを何度も確認する
- 儀式行為
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- 決まった順番で行わないと不幸になってしまうと思う
- 順番通りにできるように何度も同じ行動を繰り返す
- 数字へのこだわり
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- 決まった数字にこだわりを強く持つ
- 数字に関係する時間や順番にこだわる
- 物の配置、対称性などへのこだわり
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- 家具の配置や物の置き場に強いこだわりを持つ
強迫性障害は、普段の生活で行われる一般的な行動(例えば、戸締りの確認や手洗いなど)が極端に拡大したものと言えます。 「自分はちょっと神経質かもしれないな」と感じるか、「行き過ぎているかもしれない」という境界線は曖昧なものです。 しかし、上記のような症状がある場合は、専門の医療機関での相談することをおすすめします。
参考: こころの情報サイト「強迫性障害」
治療法
強迫性障害の治療法には、薬物療法と曝露反応妨害法があります。多くの患者は、服薬と曝露反応妨害法の組み合わせが一般的です。
強迫性障害は自分に合った治療を続けることで、治癒が期待されます。
それでは、それぞれの治療法について詳しく解説します。
薬物療法
強迫性障害の治療には、SSRI(セロトニン神経伝達物質に作用する薬)が用いられます。SSRIはうつ病の治療にも使われますが、強迫性障害における強い不安や不快感を軽減する効果があります。
服用を続けることで、徐々に効果が現れます。最初は低用量から始め、副作用の発現に留意しながら徐々に服薬量を増やしていくことが一般的です。ただし、効果が現れるまでには約4週間から長くて約3カ月かかります。早急に改善が見られない場合でも、服薬を続けることが重要です。
また、SSRIだけでは不安が強くて十分な改善が得られない場合、抗精神病薬(セロトニンやドパミンなどの神経伝達物質に作用する薬)や抗不安薬を追加して使用することもあります。
曝露反応妨害法
精神療法では、曝露反応妨害法が主な治療法で、再発予防の効果が高い治療法です。
曝露反応妨害法は、強迫観念に対する不安に立ち向かい、強迫行為を行わずに耐え、強迫行為を不要にしていくことを目指します。 具体的には、自分が汚いと感じる物に触れても手を洗わずに我慢する、留守の際に鍵をかけて外出し、戻らずに施錠を確認することなどです。
少しずつ強迫行為を抑えることで、不安も徐々に薄れ、結果として強迫行為が不要になっていきます。
強迫性障害の方への
精神科訪問看護師の関わりについて
訪問看護師は、利用者にとって信頼できる存在で、適切な助言を受けられる頼れるパートナーとなります。コミュニケーションや関わりを通じて、利用者や家族の病気に対する理解を促し、より効果的な治療を受けられるようにサポートします。
そして、訪問看護師が定期的に訪問することで、早期に病状の変化に気づくことができ、病気の悪化や入院を予防できます。
強迫性障害の方に訪問看護師は、以下のようなケアを提供します。
- 思いを尊重する関わり
- 行動を否定しない
- ストレスによる負担を軽減する
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思いを尊重する関わり
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強迫性障害の患者には、本人が繰り返している行動への思いをまずは共感することが重要です。そのため、訪問看護師はすぐに治療を開始するのではなく、まずは本人の思いを尊重する関わりをします。
そして、コミュニケーションによって少しずつ関係を築き、本人のニーズを把握し、適切な介入をしていきます。 -
行動を否定しない
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行動自体を否定したり、問題であることを説得したりするのは、強迫性障害の方にとって大きな負担です。強迫性障害を抱える多くの方は、自らが行っている行為が理不尽で無駄であることを理解していても、なかなか行動を止められず苦しんでいるからです。
そのため、確認行為によって問題やトラブルが生じていることを伝えることは重要ですが、本人に異常であると説得したり、追求したりしません。
訪問看護師は利用者の苦痛や思いに共感しつつ、確認行為をしなくても大丈夫ということを伝えつつ、行動を繰り返さないようなケアをします。
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ストレスによる負担を軽減する
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強迫性障害の治療は患者にとってかなりの負担となる可能性があります。特に精神療法の一環として行われる「曝露反応妨害法」では、強迫行為を我慢しなければなりません。はじめは強い不安や不快感を経験することが一般的であり、精神的な苦痛を感じることも少なくないです。
そのため、治療中に感じるストレスや苦痛のケアを、訪問看護師が行います。ストレスを軽減できる関わりを行い、治療を継続できるようにサポートします。
まとめ
強迫性障害は行動や思い、考えに強いこだわりをもち、逸脱することへ不安やストレスを強く感じてしまう病気です。治療には薬物療法と曝露反応妨害法があり、適切な治療を受けられれば治癒も期待できます。
ご自身やご家族、周囲の方で気になる症状がある方は早めに医療機関を受診することをおすすめします。
また、訪問看護師は、強迫性障害の利用者の思いに寄り添い、症状を抑えるサポートをします。専門家が関わることで、本人のストレスを抑えながら治療を進めていけますので、自宅で療養をする方はお気軽にご相談ください。
精神科訪問看護はリライフにご相談ください
精神科訪問看護「リライフ」は、精神疾患や精神障害を抱える地域の方々に、看護師や作業療法士が自宅を訪問し、支援を提供するサービスです。コミュニケーションを通じて利用者の精神状態や生活状況を観察し、健康な状態を維持または回復するためのサポートを行います。
主治医や関連機関との連携を図りながら、疾患の種類だけでなく、性別や年齢、病状、服薬状況など、個々の利用者のニーズに合わせた看護ケアを提供します。
強迫性障害や統合失調症、うつ病、アルコール依存症など、精神疾患でお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。