パニック障害とは
パニック障害は、100人に1人程度の割合で発症すると言われている不安の病気の一つです。突然の激しい不安とともに、めまいや呼吸困難が襲ってきます。
そのため、パニック発作への恐れから、行動範囲が狭まってしまいます。
パニック障害の症状
パニック発作が発症したときは、以下のような症状が急激に現れます。
- めまい
- 動機
- 呼吸困難
- ふるえ
- 発汗
- 吐き気
- 頭痛
- 感覚麻痺
その他にも、自分をコントロールできない恐怖や気が遠くなる感じなどの症状が現れます。身体的な症状があるため医療機関で診察を受けても、異常は見つかりません。
そして、不安感が増して、発作が起こった場所や状況を避けるようになるため、行動範囲が狭まってしまいます。
パニック障害の分類
パニック障害は大きく分けて3つに分類されます。
- パニック発作
- 予期不安
- 広場恐怖
それぞれについて説明します。
パニック発作
パニック発作は突然やってきて、胸が痛んだり、動悸や息切れ、めまいなどの症状が現れます。この時、自分が死ぬのではないか、気が狂うのではないかという恐怖が強く、病院に駆け込むことも珍しくありません。
予期不安
パニック発作が繰り返されることで、再び発作を引き起こすのではないかという恐怖を、予期不安と呼びます。過去に経験した強烈なパニック発作の恐怖がなかなか消えず、次に発作が起きたらどうしようという不安が絶えず頭をよぎり、日常的に発作の可能性を悩み続けてしまいます。
多くのパニック障害の人々が、この予期不安を抱えています。ふだん利用している公共交通機関への乗車が恐怖に感じられたり、日常生活に支障をきたしやすいです。通常の生活習慣や行動が変化し、家庭や職場、学校などでの日常生活が困難になってしまいます。
広場恐怖
広場恐怖は、パニック障害が発症する前から存在することが一般的です。不安が高まると、もしもパニック発作が起こった場合に逃げ出せない場所や、助けを求められない状況を恐れ、徹底的に避けるようになります。その結果、外出が難しくなったり、社会生活に支障をきたすこともあります。
不安の影響で、以下のような場面を避ける傾向が強まります。
- 一人で外出すること
- 人混みの中にいること
- 公共の交通機関を利用すること
- 解放空間(広い駐車場や橋など)にいること
- 閉鎖空間(映画館や店舗など)にいること
上記のような場面を避けるのは、発作が発生するかもしれないという不安や、発作が制御できなくなる恐怖があるためです。
広場恐怖により、外出して買い物をすることや職場に行くことが難しくなり、一人でいることが不安で耐え難くなります。このような状況下では、日常生活に大きな影響が出ます。また、自分自身を恥じたり、他人に相談できないと感じやすいです。
発作が現れる原因
パニック障害の具体的な原因は未だに明らかにされていませんが、いくつかの仮説が存在します。
1つは、パニック発作が自律神経を制御する脳幹部と、予期不安が情動などを調節する扁桃体を中心とした大脳辺縁系との関連性です。また、広場恐怖による回避行動は、前頭葉が関与しているとされています。
また、一部のパニック障害患者は、炭酸ガスや乳酸、カフェインなどによって発作を引き起こします。体質的な異常が関与している可能性も考えられます。
さらに、ストレスの影響も指摘されており、パニック障害の発病の数ヶ月前にストレスの多い出来事を経験した人が多いという報告もあります。
パニック障害の治療法
ここでは、パニック障害の治療法について紹介します。
薬物療法
一般的に、パニック障害の治療には抗不安薬や抗うつ薬などが使われます。抗不安薬や抗うつ薬には様々な種類がありますので、個々の症状や体質に応じて適切な薬が処方されます。
認知行動療法
認知行動療法では、客観的な判断を促し、命に危険がないことを理解し、また本人が避けている状況に段階的に挑戦し、改善を目指します。
パニック障害の患者は、不安を感じる前兆に対して常に最悪のシナリオを想像してしまう傾向があります。例えば、電車に乗っているときに発作が起こったら周囲の人に迷惑をかけるし、誰も助けてくれないかもしれないというようなことを心配してしまいます。
しかし、この最悪の状況を予測してしまう認知のゆがみに気づいたとき、「ああ、これはいつものパターンね。時間が経てば問題なく解決するはずだ。」と自分に言い聞かせることで、認知のゆがみを修正していきます。
精神科訪問看護
パニック障害は、ひとりで克服することは難しいことがあります。
治療を始めたばかりの人々は、今の状況に苦しみ、将来についての不安を感じることでしょう。
しかし、正しい治療を受ければ改善することも可能です。パニック障害では、薬物療法や認知行動療法を受けることで8~9割の人々が改善し、残りの1~2割の人々も症状が軽減されると言われます。
もちろん、自宅で生活をしながら治療をすすめていけます。自宅での療養では、専門家である精神科訪問看護を利用し、適切なサポートを受けることをおすすめします。
下記では、精神科訪問看護師がパニック障害の方へ行うケアについて紹介します。
症状や日常生活の影響を評価する
まずはじめに、どのような症状が出現し、日常生活に影響を与えているか確認します。
訪問看護師が客観的に評価するため、自分では分からなかった症状や影響も知るきっかけとなります。
安心を与える関わり
パニック障害を抱える方にとって、安心感を提供することは非常に重要です。
そのため、訪問看護師はゆっくりと耳を傾け、相手の感情を尊重し、否定せずに話を聞きます。パニックを起こさず生活できるように、安心を与える関わりをします。
パニック発作時に対応する
万が一パニック発作が起こった場合、安心感を与えるためにらわかりやすい言葉で話し、穏やかな口調で対応します。
パニック発作を経験する利用者は、苦痛や不安、恐怖に襲われています。そこで訪問看護師は声をかけて安心感を与えます。そして、穏やかでわかりやすい言葉で、「大丈夫」と声をかけ、不安感が和らぐようにケアします。
再発を予防するサポート
パニック発作の改善が見られたとしても、パニック障害は再発しやすい傾向があります。そのため、利用者は発作が再び起こるのではないかという不安を抱えがちです。
そこで訪問看護師は、再発を防ぐための環境整備を行います。利用者の自宅での生活や食事、生活習慣などに関するアドバイスなどです。環境を整えることで、再発を予防していきます。
自立支援
パニック障害の発作が収まった利用者に対して、訪問看護師は自立できるよう支援します。
例えば、外出時に不安や恐怖を感じる利用者と一緒に散歩し外出時の支援をするなどです。
利用者の生活スタイルや希望に合わせた自立支援を提供していきます。
ご家族への支援
パニック障害の利用者に対して、訪問看護師は利用者本人だけでなく家族へのサポートも行います。 パニック障害への対応は家族だけでは難しい場合があります。そのため、訪問看護師など専門家と協力することが必要です。 精神科訪問看護師は、家族にパニック障害の正しい知識を提供し、ご本人との接し方についてアドバイスを行います。 また、パニック障害に関して戸惑いや不安を感じている家族に、精神的なサポートを提供します。
まとめ
パニック障害は、利用者にとっては死をも感じさせるほどの強烈な恐怖や不安を引き起こす病気です。適切な治療を受けることで、パニック発作を改善することが可能ですが、そのためには訪問看護師の支援が欠かせません。 精神科訪問看護ステーション「リライフ」では、パニック障害をはじめとした精神疾患を持ちながら、地域で生活している方をサポートします。 精神疾患への看護の経験が豊富な専門のスタッフが、利用者本人だけでなくご家族へのケアも行います。 精神疾患でお悩みの方や、精神科訪問看護について知りたい方はご気軽にご相談ください。